連載
ファクトリートーク
#02
ベテラン社員が見た、高津紙器の昔と今
工場長らしくない工場長を目指して
-工場長・酒井幹男-
工場長を務める酒井の社歴は40年近くになります。会社の歴史を一番よく知る酒井に、高津紙器の昔の様子や変化したことなど話を聞きました。
現在、工場長を務める酒井幹男(以下 酒井)は、高津紙器で一番長く働いているベテラン社員。その社歴は40年近くになります。会社の歴史を一番よく知る酒井に、高津紙器の昔の様子や変化したことなど話を聞きました。
酒井
酒井幹男です。出身は川之江。川之江城の海側の漁師町で育った。ここらへんは瀬戸内の魚はなんでも捕れる。漁師はだいぶ減ったけどな。昔は浜で泳いだり、川之江城のある所を城山っていうんじゃけど、そこにあがって遊んだり(笑)。小・中学校は川之江に行って、高校は香川の高校に。
昔から「紙の町川之江」っていうくらいじゃけん、紙産業の地域っていう認識は小さい頃からあったよ。大きい会社は工場から煙出しとったし、金箔とか水引を作んりょる所もあったなあ。
ー 高津紙器に入ったきっかけは?
酒井
実は高校を中退しとるんやけど、そのあとに製材の会社に1年間くらい行って。でも、そこも辞めようかなっていうときに、わしのおばさんがその当時の社長(現会長)と仲良かって、「高津紙器で働いてみるかい? それだったら言ってあげるよ」と。
ほんでまあ、面接いうか顔見せに行ったら会長が対応してくれて。ちょっと話しただけで「明日から来れるな?」って言われて、二つ返事で「はい」って。ただ、高津紙器がどんな会社で何をしよるかも全然知らんかった(笑)。
高津紙器の旧社屋。
まあ18歳になったぐらいの歳じゃけん、別に不安もないわな。というより、どういう風に働くとかいつまで仕事を続けるとか、何も考えてなかった。家から5分くらいで通えるし、とりあえず行ってみようかっていう感じだったなあ(笑)。
ー 会長はどういう人だった?
酒井
親分よ親分。「俺についてこい!」みたいな人だった。会長のことはオヤジって呼びよったんやけどな。わしが入ってからも紙の断裁は現役で、夜遅くまで一緒に仕事をしよった。
わしが若い頃は「高津紙器で働いとる」って言うたら、「あそこ(高津紙器)の社長はホンマにできた人じゃけん、お前ええ所に仕事に行っきょるわ」って言われたことがある。地元では信頼されとる人だったんじゃろうな。気前もええ人やったし。
ー 入社して最初の仕事を教えてください。
酒井
その当時、高津紙器がトイレットペーパーの芯を作りよったんやけど、それの配達の助手。芯を100本くらい束ねたやつを、トラックに積んで配達しに行ってた。川之江でもトイレットペーパー作りよる会社が何軒もあったから。今では大きい所以外、殆どやめてしもたんちゃうかな。配達行ってもんてきて積み込んで、配達行って…の繰り返し。あんまり面白い仕事ではなかったな(笑)。
古いオートンの機械。
その後からは、ずっと紙の型抜きの仕事。オートンっていう機械を使って、一枚の紙からパッケージとかトレーを作るために、設計通りの形に打ち抜いてやる。木型に刃を置くんと溝を掘るんもわしらの仕事。
最初は何もできんかったな。わしの師匠は和田さんいう人だったんやけど、ものすごい腕の良い人でな。鉄板に紙を貼る所から、ホンマに一から教えてもらった。
ー どれくらいで仕事をものにできた?
酒井
それがな、一週間くらい(笑)。今思えば無理矢理やらされた感じで「お前はこっちでやっとけよ」って。まあ昔は、蓋もついてない簡単な立方体とか単純な形の箱しかなかったんよな。
今の方がよっぽど難しい。形状が入り組んどったり、丁数が多かったり。多いやつだったら18丁もある。数が多いとそれだけ一つ一つが小さくなるし、切れ具合がバラバラになるから。それのムラを取って均一にしてやるのが結構大変。
※丁数・・・一枚の紙から型抜きできる数。1丁、2丁…と数える。
トレーも、ものすごい難しいな。大なり小なり問題が出て。ちょっと特殊な紙を使ってるんよな。刃を違うものに替えたら良くなるんちゃうかと思って、一回社長に頼み込んで替えてもらったこともある。社長には「絶対成功するんですか?」って聞かれたけど、「いや、やってみな分からん」って返して(笑)。
でも、難しい方がやりがいもあるわな。もっとええ方法はないかな? って考えて、試行錯誤していくのが面白い。ここ数年特に面白さを感じるなあ。最近は、自分たちで企画デザインして新しいものを作っていこうとはしてる。わしらは考えれんけど、デザインしてくれたら何でも作るよ。やっぱり定番のものを作るよりかは、変わったものを作る方が面白い。
ー 工場長としての仕事を教えてください。
酒井
パッケージ部も紙管部も両方見てる。だいぶ前から打診はあったんじゃけど、ずっと嫌じゃって断って、就任したんは割と最近。
工場長っぽい管理業務とかは特にしてないんやけど、予定通りできとるかなって絶えず皆の様子を見に行ってる。元々、パッケージ部の方でしよったことが紙管にまで広がった感じやな。
工場長らしさは全くないな(笑)。よその会社に行くと、工場長って偉い人っていうイメージで、他の人も意見が言いにくいっていうんがあるかもしれん。
そういう意味では、わしは工場長らしくない工場長(笑)。けど、うちにはそういう堅苦しさはいらんと思うんよな。別に工場長やけん、偉いわけじゃないけんな。
ー そういう堅苦しさはあえて出さないようにしている?
酒井
そんなに意識はしてないけど、そんなん必要ないと思っとるから。一緒に働いてる人たちも普通にわしに意見言ってくれるし、しっかりしとる人がよーけおる。そういう雰囲気になっとるとわしは思う。皆もそう感じてくれとったらええんじゃけどな(笑)。
社員旅行で香港へ行ったときの様子。後列左が酒井。
ー 昔と今の高津紙器で、変化を感じるのはどういう所でしょう?
酒井
昔はな、働いとる人数もかなり少なかったんよ。全部で20人くらいやったと思う。朝、会社に来たらおばさんらが「兄ちゃん腹減ってないか? 朝ごはんにパン焼いとるよ!」って言ってくれたりな。仕事終わりも、ほぼ毎日近所の焼き鳥屋に呑みに行きよった。まあ家族みたいな感じだったな。
そういう意味では、今は良い意味で〝イマドキの会社らしく〟なってきよるわな。休みも増えたし、退職金の制度もできた。有給も勿論ある。新しい工場ができたんもそうやな。今までより環境衛生に気を配った工場になって、紙管部は特に仕事がやりやすくなったと思う。新しく会社に来る人らには、それは良かったんちゃうか。
ー 現社長に代替わりしたときに、昔から働いていた人は多く辞めたと思うが。
酒井
わしより上の人はほぼ全員やな。新しい社長になって、ちょうどいいタイミングやし辞めるわって。わしと一緒に入った営業の人も辞めてしもたんよ。その人には「酒井さんは辞めたらいかんで」って言われた。
酒井「忘年会が開かれるようになったんもここ最近やな」
まあでも、せっかく頑張って綺麗な工場作ったんやし、みんなで頑張らんとな。今の社長じゃなかったら、新しい工場は建ってないし、東京の仕事とかもなかったと思う。やっぱり商才はあるよな。油断したらいかんけん、あんまり褒めたくはないんやけど(笑)。
ー これからの高津紙器はどうなっていくと思いますか?
酒井
これからどんどん伸びるよ。今までは、自分たちで商品を企画して売るってことをしてなかったやん。そういうのを新しく作ったっていうんもあるし、プラから紙へ流れも来とる。ほんでまあ、紙管の方もまだまだキャパがある。パッケージの方も新しい機械を2台入れる。全部含めてもっと伸びていくと思うよ。
働いてくれよる子たちも、ものすごい真面目やからな。自分でしっかり考えてくれるし、その上で分からんことがあったら相談してくれて。会社として上向いていこうっていうのは感じるよな。
やけん、わしも「作りたいものがあるなら、何でも持ってこい」って思っとる。元々、〝できん〟っていうんが好かんけんな。「絶対できる」「絶対作れる」っていう気持ちはあるけん、何でも言うて欲しい。
まあそれが綺麗に組み上がるかは、図面次第じゃけどな(笑)。
ファクトリートーク
高津紙器では、新工場の完成・南工場のリニューアルに伴い、これまで以上に衛生・品質管理を徹底し、お客様に安心した商品をお届けできるように努めています。実際、どのような取り組みを行っているのか、どのようなメンバーがものづくりをしているのか、工場のありのままの姿を、さまざまな社内取材を通してみなさまにお伝えしてゆきます。
2024.06.25 UP
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#07(後編) 古紙の発生地にはどこへでも行く。多様な古紙をリサイクル・ルートに乗せて、リサイクルパルプの新たな価値を創造する日誠産業
サステナ見聞録第7回は、これまでの取材でもその技術力の高さで、たびたびお名前が登場していた、リサイクルパルプの製造販売を手掛ける、株式会社 日誠産業の島大樹専務をお迎えして、お話をうかがいました。後編をおとどけします。
2024.05.20 UP
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2023.11.28 UP
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#08(後編) 初の展示会、どうだった?
食にまつわるメーカーが多く参加した展示会で、初めて作ったオリジナル商品である紙トレーやランチボックスはどのような反響があったのか、参加した社員に尋ねました。
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